リボンの騎士雑感

9月まで持ち越しちゃったらいつまでやってんだよ、とセルフ突込みをいれたくなっちゃうのでゼミ明けの妙に冴えた頭でやっちゃいます。背後には研究室の人がたくさん。ヲタバレの危険と隣り合わせですw
とりあえず新垣さん、亀井さん、道重さん、田中さんの4名について。

ぶっちゃけ、びっくりしたっていうのが本音。歌上手いのはわかっていたつもりだったけれど、声が変わっていた。騎士ヌーヴォーの登場シーンが褒められることが多いみたいですが、私は淑女の登場シーンの方が好き。石川さんがフランツの日は淑女の『フララフラ』の冒頭のソロが新垣→田中となっているんですが、石川さんが入ると石川→新垣と続いていました。どっちのフレーズも実に個性のある淑女だったのですが、後者のソロは秀逸。語尾がフワっと音程を上げる歌唱(わかりづらい表現ですみません)なんですが、実に上手いし、あの場面での淑女に相応しい歌唱だったと思います。演技の面でも女の怖い部分というか妙なねちっこさというか、そういう女の部分が良く出ていたな、と(その点で言えば石川さんの淑女はパーフェクトでした)。剣の大会のシーンでも淑女たちは色々とやってました。舞台が広いので前の方にいるとついつい自分に近い側の動きばかり見てしまっていたのですが、後ろに行くと満遍なくみんながみんなしっかりと動いていて感心しました。中でも表情のバリエーションでは定評のある(笑)新垣さんですから、実に良い演技だったと思います。テレビドラマ向きではないんだろうけどね(笑)
騎士のシーンは声もよく出ていたし、男声とはいかないまでもしっかりとした芯のある声を出せていたので悪くはないと思いましたが、私はなんだかイマイチしっくりきませんでした。なんとなく「声を張ること」に意識がいってしまっている様に感じたからかもしれません。声を張るというのはあくまで手段であって目的ではないはずなのですが、逆転しているように感じました。たまたま観た公演がそうだっただけかもしれませんが、ちょっと辛い評価をすれば、1回1万円もする公演をリピートして観に行く人なんてのは本来かなりコアな存在で(今回はその金額の壁を乗り越えるファンがかなりいたようですが。自分含め)、初回が最終回になるケースがほとんどです。その人が観たたった一回の出来が悪かっただけだとしても、その人にとってはそれが全てです。それが舞台の醍醐味であり怖さだと思うのです。日頃のライブであっても、リピータが多いことを前提としている感が否めませんので、その辺りはメンバー、スタッフさん共に認識を改めてもらいたい箇所ではあります。40回のうちの1回でも、誰かにとっては一生でそれきりの1回かもしれないんです。そういう一期一会の感覚って今のモーニング娘。にもハローにとってもあんまりない感覚なんだろうな。何度も観たい、と思わせる力は必要ですが、1回でも十分な満足を与えられる公演ていうのも目指してみて欲しいものです。あ、ガキさんからすっかり話が逸れてしまいましたね。
ともあれ、私の中では今回の公演でかなり評価が上がりました。元々、去年辺りのツアーからぐんぐん伸びてきている印象がありましたので、ここへきていいステップを上れたんじゃないかな、という印象です。次のツアーが楽しみですね。

びっくりするほど歌唱が安定した、というのが一言での感想です。見せ場自体はけして多くはありませんでしたが、こなすべき役割をきちんとこなしている印象を受けました。歌唱に関しては問題を感じませんでした。
ただ、気になったことが。淑女たちが登場するシーンでのダンスで、全員が揃って腕を上に上げる振りがあるのですが、周りはみなビシっと挙げているのに対し、亀井さんだけがフワっと流れるような動きで上げていました。あれは意図的なものなんでしょうけど(意図してないのであればすぐに修正されるはずですが、何度見ても変化がありませんでしたので)どうにも気になりました。キャラクタの個性を出す為の演出なのでしょうか。疑問です。
振りの面では騎士の登場シーンでも、いまいちキレを感じませんでした。おおまかな流れとして、回転しながらせり上がり→踊る→歌唱という順だったのですが、この中間部の踊りがいまいちピンときませんでした。加入時のオーディションや娘DOKYUでも何度か見ましたが、リズムの早取り癖がまだ直っていないようです。バンドの拍と亀井さんの拍が全然かみ合ってませんでした(歌唱では若干アヤしい部分もあったもののそこまで気になりませんでしたので、ダンスが追いついていないという解釈をしておけばよいのでしょうか)。振り自体も「亀井絵里が踊ってます」という感じで、騎士らしさはカケラも感じられませんでした。歌唱が悪くなかっただけにこれは非常に残念。他の誰かや何かになりきることに長けている人とそうでない人というのは本質的に分かれていると私は考えていますが、亀井さんは明らかに後者だと思います(前者でいえば石川さん、道重さん、後者で言えば安倍さん、田中さんが顕著だと思います)。元々の素質の所為にしてしまっては元も子もありませんが、根源的に変えられないものというのは存在しますのでこの辺りは仕方がないのかな、という考えです。アイドルとして考えるならばあくまで自分自身を捨てないというのは正しいと思いますしね。

亀井さんの項でも述べてますが、道重さんは他の誰かになりきるのが上手なタイプだと思っています。とりわけ、本来の自分の中にない部分を取り付けるというよりは、自分と合致する部分だけを表面化させるのが上手いタイプだと思います。本来的には道重さんは非常にクレバーなタイプで、日常生活においても「ここでこうするべき」ということを常に考えて行動しているように思えます。特にハロモニ。ではそのことを強く感じます。だからこそ、今回の淑女の役は非常に上手い。新垣さんの項でも触れてますが、剣士たちの戦いの場面ではしっかりと群集としての役割を果たしてます。
スカウトのリューも一見、ただの道重さゆみに見えがちですが、あれもちょっと違うのではないかと思っています。道重さゆみの中にあるお気楽な部分や幼い部分を前面に押し出して無邪気に振舞うことを選択しているように見えました。無意識でやっているとは思えませんので、多分意識的にこのチョイスをしているんでしょう。これを意識的に出来て、なおかつそれをわからせない人が真の女優さんなんだと私は考えてます。モーニング娘。の中では道重さんは女優向きのタイプだと思うのですが、なかなか今の状況では難しいのかなーとも思います。本人にその気がなきゃ話になりませんし。
歌の面では見事なハモりを聞かせてくれました。スカウトの場面でリジェ(田中れいな)が高音、道重さんが低音でハモったのですが、これが実に気持ちがいい。本来、こういったハモりの場合は高音の方が強く聞こえがちなのですが、かなりいいバランスで低音もしっかり聞こえていましたし音程も安定していました。ただ、直後の「一人だけ」というフレーズはいつもの道重さんの歌唱になってしまっていたので、若干肩透かしを食らったような気分になりましたが(苦笑)。歌唱に関しては今まで同期の亀井さん田中さんに水をあけられていた印象が強かったのですが、鍛えれば鍛えるだけよくなるんじゃないかという印象を受けました。2005年12月にFCイベントで松浦さんの「YOUR SONG〜青春宣誓〜」を歌っていたんですけれども、あれは全然下手だとは思いませんでしたし、むしろ歌詞の意味をよく噛み砕いていて自分なりに解釈しているんだな、と感じた記憶があります。同じ路線の先輩として石川梨華さんが挙げられます。石川さんは技術的なことで言えばけして歌が上手くはありませんが、伝える・表現するという面で見れば非常に優れた歌手です。石川さんを見ていてもわかるように技術面は鍛えれば鍛えるほど良くなりますから、とにかく場数をこなすチャンスを与えてあげて欲しいです。石川さんだっていきなりあんな表現力を持っていたわけではなく、たくさんのチャンスを貰って、そのチャンスをきちんと自分の糧にしてきたから成長できたんだと思います。道重さんは今までなかなかそういうチャンスを貰えていないので、秋ツアーでは生歌で少人数で歌う場面が欲しいものです。

私は田中れいなさんのかなりのファンです。ですが、今回のミュージカルにおいては彼女の評価はかなり低いです。あくまで今回の舞台は「ミュージカル」ですので、与えられた役を演じることが一番肝心なことです。元々「演じる」という行為が苦手な子なんだとは思っていましたが、想像以上でした。舞台の上には「田中れいな」しかいませんでした。
そもそも(これは完全に私の想像ですが)彼女は「田中れいな」というアイドルを常日頃から演じているので、その仮面の外し方がわからなくなったのではないかと思います。彼女の最近のCD音源における歌唱はどの曲でもあくまで「みんなの知ってるみんなが望んでいる田中れいなの歌」であって、レンジが狭いなぁという印象を受けていました。加入当初の方が表現という意味では幅が広かったように思っています(ライブにおいては非常に生き生きと「色んな田中れいな」を見せてくれているのですが)。あくまで自分を貫き通したまま、他の誰かを演じている先輩方(安倍なつみさんや松浦亜弥さん)を見習ってみてはどうだろうと思ったりしています。あくまで自分を捨てないのはアイドル的には正解ですが、今回の舞台にはそぐわないものだったと思います。そういう意味では適材適所を見事に実践してくれた演出家の木村さんに本当に感謝してます。
秋ツアーはモーニング娘。のツアーですから、彼女の本領が発揮されることと思います。適材適所を本人たちも意識的でも無意識でも構わないので実践してくれればいいな、と思います。